進行した慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者さんは、一般に呼吸困難のために自宅に引きこもり、食物を食べると呼吸困難が増強するため、食事が細く、肋骨と頚部の筋肉が浮き出た痩せた高齢な患者さんが多いのが現実です。このような痩せた進行したCOPD患者さんを診療していると、とても薬物療法だけで病気や生活の質(QOL)が良くなるとは思えず、栄養療法・運動療法・患者教育を含む呼吸リハビリテーションを行いたいと以前から思っていました。
そこで、獨協医科大学越谷病院でも約3年前から呼吸リハビリに関する勉強会を始めて、ついに念願であった入院での呼吸リハビリ(10泊11日)を2007年1月から始めました。呼吸リハビリテーションは、意欲が高い患者さんであることが重要です。しかし、一般に日本のCOPD患者さんは70歳以上の男性が多く、呼吸リハビリに対する意欲が少ないのが現実です。実際、第1例の患者さんも、第2例目の患者さんも最初は呼吸リハビリに対する意欲は低下していました。しかし、呼吸リハビリテーションチーム全員の熱心な指導とともに、患者さんの奥さんにも病院に来て頂き、ご主人の病気を理解して頂いた上で、吸入方法、運動療法と食事療法を一緒に学んでもらいました。入院時には、二人とも決して呼吸リハビリテーションに対して積極的ではありませんでしたが、そのうち空いている時間にベッドでカーテンを閉めて、こっそりとセラバンド(筋力トレーニング用のゴム)を用いたトレーニングを始めてくれました。また、看護師から『運動すると病院の食事が美味しい。』と言って、食事を全部食べてくれたとの報告を聴くと、呼吸リハビリテーションチーム全員が嬉しくなってしまいました。
やはり、患者さんが良くなることは、医療に携わる者にとって、何よりの“栄養”だとつくづく思いました。最初の患者さんは、退院後の最初の外来に黒とピンクのジャージ姿で現れて、『今では奥さんより早く歩けるようになった。』と胸を張って僕に話してくれました